花咲婆さんから始まる物語『ブラッサム』。そのオープニングが描くもの。

いろいろ

NHK連続テレビ小説『ブラッサム』が始まり、はやひと月になる。

前作『風、薫る』では、ダブルヒロインの見上愛さんと上坂樹里さんの息の合った演技が心地よかっただけに、少しばかり寂しい気持ちで最終回を観終えた。

そんな寂しさを引きずりつつ週が明け、石橋静河さんが主演を務める『ブラッサム』の初回を観た。

加賀まりこさんと松たか子さんの堂に行った演技によるアバンタイトル。

そこからのオープニング、YOASOBIの『咲き誇れ』と見事に同期した映像とその美しさ、これにさっそく身も心も奪われた。

書斎の窓際にしつらえた文机、窓の外をながめるのはヒロインの珠たま。

外の景色に心が満たされたのか、嬉々とした表情で筆を起こす。

するとシーンが変わり、青々とした葉を茂らせた大きな木の、その根本から横に伸びた太い枝に腰を掛け、たたずむ珠の姿が。

木々の下を歩きだすと、少しばかりの小躍り。

これ以降、書斎と外のシーンが何度か繰り返されるが、これが『書くという行おこない』を上手く描き表しているようで感心するし、嬉しくもなる。

すらすらと筆を走らせていた珠の手がにわかに止まると、浮かない表情で頬杖をつく。

まるで、言の葉が枯れてしまったかのようだ。

その心を映し出すかのように、葉の落ちたつぼみだけの桜の下を珠がとぼとぼと歩く。

シーンは書斎にもどり、頬杖でうつむいていた珠がふと閃いたかのように顔を上げると、その顔は陽の光に照らされ、つぼみが開いたかのようにほころぶと……。

満開の桜の下、晴れやかな顔の珠が、いきいきと誇らしげに、可愛らしく楽しげに、ときにおどけ、ときにつややかに、ときに舞う蝶のようにおどる。

青と白のグラデーションが爽やかな鰹縞のお召しものは情熱的な赤の差し色が鮮やかで、淡い桜色の景色によく映える。

美しく咲きほこる桜の下、降ってくる花びらとともに綺麗な蝶が舞っているかのようだ。

きっと書斎では筆がおどって、いや舞いおどっているのだろう。

SNSの投稿であれ、紙の日記であれ、ものを書く誰しもが経験するであろう「筆がおどる」という、一種のトランス状態。

それは「書きたいことが湧いてくる」というよりも、私にとっては「思いつきもしなかったことが降ってくる」ような感覚、そう、桜の花びらのように降ってくる、そういう感覚だ。

その感覚を見事に表現しきったこのオープニング(月曜限定のロングバージョン)は、私にとって、これだけでひとつの作品と言えるほどだ。

そしてまたこのオープニングは、ヒロインのモデルである宇野千代さんの人生、モダンで洗練された、情熱的で恋多き人生を描いているとも言える。

桜は恋をあらわしているのだろう。

そう言えば、この初回の最初のセリフは「花咲婆さんになりたい」であった。

今後、珠はどんな桜をどれだけ咲かせていくのか、それもまた楽しみだ。

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